Shunkiのぼちぼち記

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zoom RSS 聖杯戦士☆マジカルリンリン8 その4

<<   作成日時 : 2005/04/18 21:03   >>

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「ワンパターンだけど、そこまでよアンリ=マユ!」
 小次郎の案内で食堂に突入するなり、目に入ってきたのは黒い影……とちょっと違う何かにしがみつかれた士郎の姿。その前の床には……うわー、蟲の大群。何よこれ、と思う前にわたしはポケットから小粒のルビーを取り出した。むぅ、放火って罪よね確か……しょうがない、不可抗力だ。
「Die Flamme der Reinigung,conflagrate die Gemeinheit!」
 呪文を唱えながらルビーを叩きつけた。炎が燃え上がった瞬間、セイバーと視線を交わして別のコードを唱える。炎の中から出現する変身ヒロイン、何か良い感じじゃない?
『――Anfang!』
 服が消え、再構成され、猫耳猫尻尾はもう良いから、と思いつつはいポーズ。炎はうまい具合に蟲を焼き、ああそうでもない、じぶじぶと消えていく……ち、この家湿気多いわ。良くカビないわねっ!
「冬木の平和を守る為!」
「邪悪の野望を砕く為!」
「聖杯戦士☆マジカルリンリン!」
「マジカルセイバー!」
「ここに見参!」
 いい加減にパターンだなぁ。今度こういう時はセイバー以外とペアを組もう、って違うでしょうわたし。
「カカカ……来よったか、聖杯戦士よ」
 焼けなかった蟲たちをかき集めた中から、にゅうと老人の姿が現れる。こいつがグランドマスター・マキリ……間桐臓硯、実質上の間桐当主。アンリ=マユの最高幹部とは知らなかったわ。それに、不死に近い長寿とは風の噂に聞いていたけれど――蟲で肉体を構成しているなんて。
「遠坂! セイバー!」
「動くな。エミヤシロウ」
 影のような男……多分、こいつは桜が言っていたコマンダー・アサシンだろう……に抱え込まれた士郎が、わたしたちの名を呼ぶ。と、その喉元にアサシンの右手が掛けられた。ぐい、と軽く絞め上げられ、苦しそうに顔をしかめる士郎……こら、わたしの弟子に何すんだ。
「シロウ!」
 セイバーが見えない剣の切っ先をアサシンに突きつけた。小次郎は油断なく、臓硯の方に注意を向けている。で、わたしは……臓硯を真っ正面から睨み、アゾット剣をそちらに向けた。
「士郎を放しなさい。でないと、屋敷ごと焼き払うわよ」
「そちらこそ、武器を収めよ。そうでなくば、鞘の主の生命は保証できんなぁ?」
「収めたところで、助ける気なんてさらさらないでしょうが」
 相変わらずえらそーに下卑た笑いを浮かべる臓硯を、負けるもんかと睨み付けてやる。ここで一歩も引く気はない。一歩どころか半歩でも退けば、士郎は殺される。殺されなくても……戻ってこない。冗談じゃない、取り返してやるんだから。
「一の太刀は私に任せよ、聖杯戦士」
「小次郎?」
 膠着状態かなーと思った時、一人その場にそぐわない格好をしている小次郎が音もなく前に進み出た。手に携えた長ーい日本刀を、静かに鞘から抜き放つ。あ、士郎、自分の状況忘れて見惚れてるでしょ。あいつ、さりげに剣とか刀とか好きっぽいのよねぇ。そう言えば投影するのも刀剣ばっかだな。
「コジロウ? ほほう、魔女が喚んだつまらぬ亡霊か。カカカ、亡霊風情に何ができる?」
 こらジジイ、人の口調真似るな。気分が悪いってーの、とわたしが歯がみした、ほんの一瞬。
 風が吹いた。
「!?」
 セイバーが息を飲む音が聞こえた。そのくらい、小次郎の太刀筋は静かで、それでいて無駄がなかった。あんなに長い刀を、戦うには十分な広さがある訳じゃないこの食堂で、あんなに綺麗にターゲットである臓硯目がけて正確に振るうことができるなんて。
「む……?」
 すっと老人の胸に一筋の線が走る。そこからずるり、と小さな身体が上下二つに裂け、上半分が滑って床の上に落ちた。身体を分断された蟲たちが、体液をまき散らしながらじたばたもがいてる。
「投影開始!」
 そっちに気を取られてた隙に、士郎のかすれた声が響いた。次の瞬間、彼の喉を押さえていたアサシンの手首に士郎が創り出した短剣らしいものが突き立てられる。ひっ、と声なのか息なのかわからない音を立てて、アサシンは士郎を放り出した。
「シロウ!」
 即座にセイバーが風のごとく突っ込んだ。倒れ込む士郎を左手に抱え、自分の背後にくるりと回しながら右手で構えた剣をアサシンに向けて突き刺すように繰り出した。ええい、本気でヒロイン属性ね衛宮士郎、それはものすごく問題があるぞ。とゆーかそれはわたし相手にしてよ、お願い。
「間桐臓硯……いいえグランドマスター・マキリ! 今日が初対面だけど、最後にしてやるわ!」
 小次郎がすっと身を引く。うん、分かってるじゃない。その横から足を踏み出して、もういっちょ小粒のルビー軍団をまき散らす。わたしの魔力もおまけしてやろう、燃やし尽くしてやる!
「Die Flamme der Reinigung,conflagrate die Gemeinheit!」
 ごめんねワンパターンでー、とか思いながらルビーを叩きつけ、魔力を形にする。再び燃え上がった炎は、さっきよりは勢いが強い。うん、これなら灰にできるかな?
「カカカ、その程度の炎でワシを滅ぼせると思うてか? まぁ今日の所は小手調べ、この辺でワシは退散するとしようかの」
「そう簡単にお約束展開に持ち込んでやるかーっ!! Funf!」
 ここまでお約束が続けば、わたしだって最高幹部がとっとと逃げ出す事くらい予想できる。アゾットと一緒に持っていたとっておきの宝石を、炎の上からさらに叩きつけてやった。ほうれ燃えろ燃えろ、炎よ燃えろ火の粉を巻き上げ天まで……さすがにそれは拙いけど。
「ぬぅ……ここまで蟲を減らされては、ワシも再生に時間がかかるのぅ」
 まだ生き延びるつもりかこの蟲爺、ともう一度宝石を叩きつけようとした瞬間、肩に熱い痛みを感じた。しまったぁ、アサシンのこと忘れてたぁ。セイバーの攻撃をかいくぐり、わたし目がけて投擲された短剣をまともに食らっちゃったんだ。この一瞬の隙が、臓硯に逃げる暇を与えてしまったようだ。
「お約束はお約束というものじゃよ、カカカカカ――アサシン、行くぞ。影共よ、そやつらを食ろうてしまえ! 鞘の主だけはワシの下へ持って来よ!」
 臓硯が多数の蟲に分裂し、ざぁっと消えて行く。くう、これでも滅ぼせないなんてふざけんな! おのれ間桐臓硯、次に会ったら絶対ぶっ飛ばす! ――って、影?
「遠坂! 大丈夫か!?」
「凛!」
 士郎とセイバーが同時にわたしを呼ぶ。ええい、鞘と剣だから相性が良いのは分かるけど何か悔しい。と、それどころじゃないわね。
 わたしたちの周囲は、しっかり黒い影に取り囲まれていた。士郎はわたしに駆け寄って、アサシンの短剣を食らった側をガードしてくれている。セイバーと小次郎はわたしたちの背中を守ってくれている。……わたしも頑張らなくちゃ。
「――聖杯戦士よ。次に会うことがあればその生命、貰い受ける。影ごときに滅ぼされるでないぞ」
 む、かっこいい台詞吐いて消えやがったな、アサシンめ。言われなくても影になんかやられてたまるか。とりあえずは自分の傷に治癒魔術掛けて、と。へー、毒刃じゃないのね。
「士郎、わたしは大丈夫だから、ここを切り抜けることだけを考えて。あんたが奪われたら、わたしたちはおしまいなのよ」
 意図的に感情を消して言う。だって、感情を出して言ったらわたし、何を言うか分からない。だから、顔も見てられない。ちくしょう、わたしって弱いんだ。
「何言ってんだ。みんなで帰るぞ」
 だのに、士郎はしれっとそんなこと言いやがった。ええい、士郎がこんなこと言ってるのにわたしが弱気でどうする。そうよ、みんなで帰ってとっとと昼ご飯を食べるのよ、ああお腹空いたって今頃思い出した、まだ昼ご飯食べてないじゃないの!
「それもそうね。士郎、とっとと帰ってお昼ご飯食べるわよ。迷惑料代わりにちゃんと作りなさいね!」
「おぅ、任せろ」
 投影開始、と士郎の声が耳に届いた。多分いつものオセロカラーな短剣だろうな、とは推測がつく。わたしもアゾットを構え、足を一歩踏み出した。
「それじゃ、行くわよ士郎、セイバー、小次郎!」
「おう!」
「行きます!」
「承知!」
 三者三様の返答が戻ってくる。と同時に、5振りの刃が多数の影目がけて振り下ろされた。続けざまにざしゅ、ざしゅっと布を裂くような音が響いて、影が次々に斬り払われる。つーかこんな雑魚でわたしたちを倒せるかと思うてかー!
「凜、あれを!」
 影の数が半分くらいまで減ったところで、セイバーが何かに気づいたように部屋の奥を指さした。そちらを見てわたしと士郎の口から同時にげ、と下品な声が漏れる。
 そこに残った全ての影がしゅるしゅると一つにまとまり、何かアップグレードした姿になってしまったのだ。ひらひらと布みたいに揺れている触手……なんだろうなぁ、それも数が増えてる。
「……いや、合体はある意味お約束だけどさぁ」
 げんなりした様子の士郎に、わたしもはぁとため息をつく。しかぁし、合体した相手は当然パワーアップしているというのもこれまたお約束なわけで。
「遠坂っ!」
「え?」
 いきなり、わたしは突き飛ばされた。咄嗟に伸ばされたセイバーの腕に抱きとめられたわたしが、慌てて元いた方向を振り返ると――
「シロウっ!」
 セイバー、耳元でうるさい。だけど、わたしも同じ気持ちになった。だって、合体黒い影ががばぁと大きい布みたいに広がって、わたしを突き飛ばしてバランスを崩した士郎の上に覆いかぶさる瞬間を見てしまったから。拙い、士郎が連れ去られる!
「……へ?」
 だけど、それはほんの一瞬のこと。どこからかきゃあ、というか細い声が聞こえたかと思うと、影は何かに怯えたみたいにざざっと後ずさった。士郎は……意識を失って床に倒れている。ぱっと見たところ、外傷はないようだ。良かった。……今の声、聞き覚えがあるなぁ。誰だろう。
「シロウに何をしたか、影よ!」
 わたしよりセイバーの方が、立ち直りが早かった。わたしの身体を放し、剣を大きく一振り。影の触手が数本切れたけれど、刃が届くより先に向こうが避ける。
「凛はシロウを! 小次郎殿!」
 ぼけっとしていたわたしに、半ば怒りの含まれたセイバーの声が届く。あ、そうだ、士郎を守らなくちゃ。慌てて立ち上がり、身体を投げ出すように倒れたままの士郎のそばに駆け寄った。
「士郎……士郎っ!」
 頬を何度か軽く叩いたら、士郎は目を覚ました。う、こうやって見ると士郎、結構『男』だなぁ。眉毛はしっかりしてるし、目元もそこそこきりっとしてるし。ちょっと頬は丸いかな、って思うけど、それもこれからだんだん男らしくなっていくんだろう。そして。
 ――アーチャーの顔が、士郎に重なった。
「あ……え、とおさか? 俺……」
「良かった。大丈夫みたいね」
 軽く頭を振りながら上体を起こす士郎の背中を支えてやった。むぅ、見た目よりずっと筋肉が付いてる。くそう、今からでも良ければ唾つけておこう。ぺたっと。
「あ、ああ――」
 何度か目を瞬かせていた士郎の視線が、何かを見つけてぴたりと止まった。それはわたしの背後、黒い影を相手にしているセイバーと小次郎の方向をまっすぐ見つめていて。
「?」
 振り返ったわたしも、ぽかんとしてしまった。
 こちらからだと黒い影の向こう側にいる小次郎が、黒い影に背を向けて構えていた。その長い日本刀を構えた姿はものすごく絵になっていて、薄暗いこの空間の中ですら淡い光を放って見える。セイバーは影とわたしたちの間に入って盾になってくれているんだけど、やっぱり彼の動作に意識を奪われているようだ。
「秘剣――」
 涼やかな声が、あまりにもそぐわない空間に響く。影がその声に含まれたものに気づき、後ずさろうとした瞬間、刀が閃いた。
「――燕返し」
 ヒュン、ともシュッ、とも取れる微かな音。その音だけを残し、小次郎の長刀が影を『同時に』3方向から狙って繰り出された。ってええーっ!?
「キシュア・ゼルレッチ!?」
 多重次元屈折現象。うちの大師父の名前を冠したぶっちゃけとんでもない現象を、この亡霊くんはさらりと見せやがってくれました。そう、あの刀は時間差で3回斬りつけたのでも、刀自体が3つに分裂したのでもない。一本の刀が、まったく同時に、3方向からの斬撃をかましてくれたんである。は、は、は、反則だ反則ーーー!
「――――――!!」
 さっき聞こえた声と同じ、か細い悲鳴を上げながら合体黒い影は消え去っていった。そりゃまぁ、逃げ場がないように繰り出された刃なんだから逃げられるわけもなし。で、やっぱり聞いたことのある声だ。
「……小次郎殿……今の技は、一体?」
 茫然とした声で、セイバーが問う。それはわたしも聞いてみたい、あんたどうやってあんな技会得したのよ!?
「ふむ……ただ、燕を斬ろうと思っただけだ」
「ツバメ? ああ、だから『燕返し』なのか」
 士郎が感心したように頷く。いや問題はそこじゃないってば。
「ただ、燕というものは素早く飛び、なかなか捉えることが出来ぬ。故に私は来る日も来る日も修行を重ね……そして会得したのが今の技だ」
 マジかーい!! ただ修行して修行して修行しまくったからって、多重次元屈折現象なんてもんを使えるようになるなんて……一念岩をも通すって言うけれど、そういうもんなんだろうか。
「それよりも聖杯戦士、そして鞘の主よ。無事か?」
 うわー、士郎並みかそれ以上にマイペースだ、こいつ。それはともかく、わたしとセイバー、そして士郎の様子を見比べてみる。わたしは肩をやられたけど治療済みだし、セイバーは無傷だし、士郎は影に飲み込まれたけどこれまた無傷。うん、無事だ。良かった。
「ええ、大丈夫です。小次郎殿、あなたのおかげだ」
「ほんとう、小次郎のおかげよ。ありがとう」
 ここは素直に礼を言っておこう。だって、士郎を失わずに済んだ。この際鞘がどうだなんてことじゃない、わたしは士郎を助けに来たんだもの。
「俺も大丈夫……みたいだ。ありがとう、助かったよ」
 そう、士郎を助けに来たんだ。それというのもこいつが連絡も何も無しでこんな所までのこのこ出てきたのが悪い、ああ悪い!
「そうね。それで衛宮くん、これは一体どういう訳なのかしら?」
「え?」
 冷や汗をかきながら、士郎がわたしを見る。わたしはとびっきりの笑顔を見せて差し上げながら、左手を銃の形に構える。ほほほ、とりあえずは大人しくして貰おうじゃないの?
「わー遠坂、話を聞けっ! これには訳がっ!!」
「話なら後でちゃんと聞いてあげるから、安心しなさい♪」
 こら、腕だけで後ずさりするな。狙いが狂うじゃないの――わたしのこの手が光って唸る、あんたにかませと輝き叫ぶ。食らえ士郎、お仕置きガンドアターック!!
「り、凛っ!?」
「聖杯戦士殿?」
 セイバーと小次郎の声なんて聞こえませーん。あー、士郎の「うぎゃああああああ!」って悲鳴が心地良い〜。うーむ、わたしSなのねぇ。

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