Shunkiのぼちぼち記

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zoom RSS Fate/gold knight 21

<<   作成日時 : 2012/02/29 20:39   >>

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 アーチャーの詠唱が完成するまで、玄関ホールには何の変化も起きなかった。セイバーも弓ねえも、アーチャーのマスターである遠坂だって、あいつが何をしようとしているのか分からなかったはずだ。
 だから、豪奢な玄関ホールであったはずの戦場が一瞬にして剣の丘へと変化した時も、それが何を意味するのかほんの一瞬だったけど分からなかったんじゃないだろうか。
 もっともその時の俺には、一体何がどうなったのかなんてまるで分からなかったんだけど。
「──は?」
「え?」
「……これは!?」
「何だ?」
 まず遠坂とイリヤが、続いてセイバーと弓ねえが世界の変化に気づき動きを止める。バーサーカーも、さすがに空気が変わったことに気づいたのか小さく息を吐き、身構えたまま動かなくなった。
 俺はゆっくりと視線を動かし、周囲を見渡してみる。
 地平線の見えない、くすんだ空気と乾ききった大地。
 そこに突き立っている、無数の剣。
 空を覆う、ゆっくりと動き続ける巨大な歯車。
 ぎしぎしと軋む音が、遠くから聞こえてくる。
「固有、結界……」
 呟いたのは誰だろう。遠坂? イリヤ?
 ああ、でもそんなことはどうでもいいや。この『世界』の呼び方を、その声で俺は知ることができたんだから。


  Fate/gold knight 21. きんのひかり


「そんな、うそ、どうしてっ……」
 うろたえるイリヤの視線が、一点を見つめる形で止まった。その先にいるのは……当然と言うか、この世界を造り出した張本人であるアーチャー。
 ホコリっぽい風に白い短い髪がさらさらと、赤い外套がふわりとなびく。そうして世界の主は俺の方を肩越しに振り返り、ニヤリと不敵な笑みを浮かべてみせた。
 そうか。お前は俺に、この世界を見せたかったんだな。
 何の理由もなく、それだけははっきりと分かった。もっとも、あいつの行動の意味なんて俺には分からないけれど。多分、いつか必要になるからだろうな。
「アーチャー、これがそなたの奥の手か?」
「なかなかのものだろう?」
 弓ねえの呆れ声に、どこか自慢気な声が答える。ああ、あいつ料理以外にもあんな風に自慢できることがあったんだ。そう考えると、何だか笑えてくるな。
「あなたみたいなサーヴァント、知らない! 固有結界なんて、そんなっ!」
 バーサーカーの巨体に隠れるようにして、イリヤが悲鳴を上げていた。白い顔が真っ赤になっているから、えらく興奮しているみたいだ。
「は、ははは……わたし、なんつーサーヴァント引いたのよ……」
 遠坂の顔は、俺からは見えない。けれど多分、ひくひくと口の端を引きつらせているんだろうな、とは思う。手の指がピクピク震えているのが見えるから、ほぼ確実。
 イリヤがあれだけうろたえて遠坂の顔が引きつってるんだから、これは余程の大技というやつだ。何しろ、世界の中に自分の世界を創り出しているんだからな。理屈はともかく、そのくらい俺にも分かる。
 だけどその大技を見て、俺は何故かパズルの一片がかちりと組み合わさったような、奇妙な感覚を受けている。それに、アーチャーも俺にこれを見せたかったようだし。
 この剣の世界は、俺に何か関係があるんだろうか。
 俺とどこか似ている、あのサーヴァントが作り出したこの世界は。

「弓美っ!」
「! おお!」
 不意にアーチャーに名を呼ばれ、金の姉が吠えた。たった今紡がれたこの『世界』が何であるか、なんて弓ねえにとってはどうでもいいんだろうな。それよりも、目の前にいる強敵を打ち倒すべきチャンスなんだって彼女は直感で認識したはずだ。
 右の手に銀の剣を携え、視線だけで赤の騎士とタイミングを合わせて弓ねえが床を蹴った。ふと視線を移すと、いつの間にかアーチャーの手にもよく似た……いや、同じ剣がある。
 違う。
 同じじゃない。
 外見はそっくり同じだけど、あれは違う。
「……どういう、ことだ……?」
 ぼんやりと状況を見つめている俺の視界の中で、2人のアーチャーは左右から同時にバーサーカーへと斬りつけた。反撃のために振りかざされた太い腕は、姉貴を守ろうとするかのように張り巡らされた鎖に絡め取られる。
『はああっ!!』
 振り下ろされた2つの刃は、バーサーカーの太い首筋を挟み込むように食い込んだ。一瞬の間の後、噴水のごとく血が噴き出す。そうしてあり得ない方向にねじくれた首は、がくりと項垂れた。
「これで、あと8つ」
 巨人の身体を足場にして飛び離れながら、アーチャーが呟く。着地と同時に左の手には漆黒の洋弓、右の手にはねじれた剣が出現した。
「まだよ! まだ、負けてないっ! わたしのバーサーカーは最強なんだから!」
 イリヤの叫びは、どこか泣いているような響きを帯びていた。その目の前で断ち切られた首の血管と筋肉が紡ぎ合わされ、見る間に狂戦士は復活を遂げていく。
 アーチャーは床を蹴り、階段の上まで飛び上がる。そうして洋弓に剣を、まるでそれが矢であるかのようにつがえた。と、自身の任務を察知したのか剣はきゅうと絞り上げられるように細められ、文字通り一本の矢と化す。
 見れば分かる。
 あの剣は、データこそ改竄されているけれどアルスター伝説に登場する聖剣カラドボルグだ。あいつ、あんなことまでできるのか。
 いや、できるのは、あいつだけじゃない。
「I am the bone of my sword.」
 きりと弦を引き絞り、放つ。と同時に、周囲の空間から同じようにバーサーカーの頭部を狙い、無数の剣が一斉に放たれた。あのくらいの力でなければ、バーサーカーの生命を削り取ることはできない、のか。
「砕けろ!」
 着弾の瞬間、主の命令に応じて剣はその場で激しい爆発を起こす。一振りの剣であればダメージを与えることは叶わないだろうが、無数の剣が同時に弾けたのだ。巨人の頭部はこれで何度目か、跡形もなく粉砕される。
「あと7つ、か……」
 それでも、着地と同時に次の剣を構えたアーチャーの声は優れない。ちっと軽く舌を打ち、それからちらりとこちらを振り返った。視線が、どうにか起き上がった俺へと一直線に注がれる。
「上手く受け取れ。でなければ私も貴様も、ここで潰える」
「分かってる」
 本当に分かった、わけではないんだと思う。だけど、頷きながら俺の口からはその言葉がするりと流れ出していた。
 きっと、これは必然なんだろう。
 この世界は……いや、この世界と似て非なる世界が、俺の中にあるんだって何故か分かるから。

 受け取れ。

 アーチャーは俺にそれを分からせるために……それだけじゃないとは思うけど、でもそのためにこの世界を俺に見せてくれたんだ。あいつが口にした言葉の意味を、胸の中で噛み締める。
「私とて、黙って見ているわけには!」
 再生しながら黒曜石の刃を振りかざしたバーサーカーの元へ、見えない剣を構えつつセイバーが突進した。俺のせいで全力を出せないのに、あいつはそんなことをおくびにも出さずに戦ってくれている。
 なら俺も、少しでも力になれるようにならなくちゃいけない。
 アーチャー。
 力、借りるぞ。
「カラドボルグ、グラム、デュランダル」
 じっと戦闘を見つめる俺の口から、剣の名前がひとつずつ勝手にこぼれ落ちていく。それに気づき、アーチャーが口の端をくいと上げたのが分かった。
「クラウソラス、フルンティング、ミストルティン」
 積み上げられる、『名剣たち』の記録。それらの記録がひとつの形を紡ぎ上げていき、俺の中で組み上げられていく。今まで使われていなかった俺の魔術回路が、その形を現実世界に生み出すために総動員される。
「メロダック、ハルペー……多い、な」
 たくさんの剣が現れ、そして消えていく。その流れの中で、遠い過去に失われたひとつの剣が残した欠片が、あちこちの剣たちの中に宿って残っていることに、気づいた。
 剣自身のデータを改竄できるのであれば、そのデータの中に紛れた『失われた剣』の欠片を取り出すことだってできるはずだ。
 だって、きっとその剣は、自分が再び使われることを望んでいるから。

「我からもひとつ、見せてやろうぞ!」
 バーサーカーの剣をどうにかセイバーが受け止める、その隙をついて弓ねえが巨人の背後に回った。ボールを投げるときのように振りかぶった右手が、何かをぐっと掴む。
 空間から引きずり出されたのは、どこかで見たような真紅の槍だった。同時に、それを取り囲むようによく似た形の槍がいくつも形成される。これは多分、アーチャーの援護のような気がする。かなり無理をしてるような感じもするけれど、大丈夫だろうか。
 まああいつのことだから、絶対に顔には出さないだろうけどな。
「……ぐっ」
 途端、俺の左胸にずきりと痛みが走る。思い出したのは、深夜の学校の廊下だった。
 冷たい床と、胸の辺りの熱さと、そして……迎えに来てくれた、姉貴の心配そうな顔。
 そうか。
 あれは、ランサーが使っていた──俺を一度、刺し貫いた槍か。
「クランの犬が魔槍、その身に受けよ!」
 叫ぶ弓ねえの表情が、とても恐ろしく見えた。美人は怒らせると怖いって言うけれど、姉貴の怒り顔はそれなりに見慣れていたはずなんだけどな。
 ザクザク、ザクリと肉を貫く音がして、黒い身体に大量の赤い槍が突き立っていた。前から、横から、後ろから、それらは寸分の狂いもなく心臓を破壊している。ほんの一瞬後、槍は1本を残してしゅうと煙のように消え去った。ぐらりと揺れ、倒れ伏す巨体を少し離れたところに着地しながら見つめていた姉貴が、ぼそりと呟いた。
「残るは6つ、か」
「そうね……ああでも、さすがにそろそろ弾切れじゃないの? 肝心のセイバーも全力出せないでしょうしね」
 冷静さを取り戻したらしいイリヤが、赤い目を細めてにやりと笑った。ち、という誰かの舌打ちが妙に響いて聞こえる。
 生命を12持ち、同じ攻撃では一度しか倒せない、神の子。ただでさえ強過ぎるその力は狂化によって更に底上げされ、そして彼を操るマスターは最高の力を持っている。
 確かに、このままでは俺たちは限界だ。セイバーの宝具を持ってしてもあと1つを減らすのがせいぜい、かもしれない。弓ねえやアーチャーも厳しい。遠坂はあの宝石の一撃を繰り出せただけでも奇跡的と言える。
 だけど。
 俺なら、できる。どこから湧いてきたのか分からない、確信が胸の中にある。
 データの解析は得意だ。どこがおかしいのか、どこが歪んでいるのか。
 数多の剣の中からそのおかしい部分を取り出して、俺の中で組み上げていく。遠い遠い昔、失われてしまった一振りの剣を。
「はぁあっ!」
 自分がふがいないせいであれだけ苦戦している、銀の鎧を纏う少女に相応しい、剣を。
「……魔術回路、接続」
 自分の中にあるスイッチをがきんと入れる。瞬間、細い線のようなもの……魔術回路が次々に、力を伝え始めた。伝わってくる力は、俺が掲げた掌の上に『それ』を組み上げていく。
「ふん。まあまあだな、衛宮士郎」
「何が……って、げ、相変わらず反則っ!」
 アーチャーは満足気にほくそ笑み、遠坂は冷や汗をかきながらガンドを放ち続けイリヤを牽制してくれている。それはつまり、俺に全てを任せてくれているってことだ。
 なら俺は、この剣を、現実に組み上げてやらなくちゃ。
 そう、そうだ。俺の中に組み上がった剣はこうやって、俺の外へと取り出さなくちゃならない。
 だって、内側にあるままじゃあ、誰の力にもなれないじゃないか。
 剣は、鞘から引き抜かれて初めてその力を発揮するんだから。

 俺は多分、自分の内側に無数の剣を内包した、鞘なんだろう。

「セイバー!」
 喉の奥から搾り出すように、彼女の名を呼ぶ。はっと振り返ったセイバーの青い眼が、俺の手に生まれつつある剣を見て驚いたように見開かれた。
「その、剣は……!」
 ああ、お前も気づいたんだな。
 そうだ、これはお前のための剣だ。お前にもう一度使って欲しいと願って、その願いを俺が叶えた剣だ。
「来い! セイバー!」
「はい!」
 不可視の剣が、バーサーカーの刃を腕ごと弾き飛ばす。そのまま地面を蹴ってセイバーは、俺の元に滑り込んできた。その向こうに黒い巨人が見えるのが、ちょっと怖いかな。
「■■■■■──!」
「させるか、たわけが!」
 だけど、追いかけてくるバーサーカーの身体を押さえ込むように、弓ねえが鎖の網を広げてくれた。さすがに俺は、あの攻撃を受けてまた生き返れる保証はないものな。いや蘇生なんて、バーサーカー以外の全員がまるで保証のないものなんだけど。
「はあっ!」
 アーチャーが投擲した黒白の短剣が、バーサーカーの足元で爆発を起こす。その光に、セイバーの金の髪がきらりときらめいた。
「シロウ」
「ああ。頼む、セイバー」
 力強い青の瞳が、俺を見つめてくる。俺はゆっくりと頷いて、自分の手を彼女に委ねた。
 剣を握りしめた俺の手の上から、セイバーが手を重ねる。軽く、そして力強くきゅ、と握りしめてくれた。
 ああ、力が湧いてくるのが分かる。
 俺の中にある何かが、俺が世界に引っ張り上げた剣が、俺とセイバーに力をくれる。
 今、この現状を打破するための力を。
 遠坂を、アーチャーを、セイバーを……そして、姉貴を守り通すための力を。
「行きます!」
 セイバーの力が、俺の手を通って剣へと流れこんでいくのが分かる。剣が、彼女の力を受けて喜んでいるのも分かる。
 頼む。
 俺たちに力を。未来を、くれ。

「勝利すべき──黄金の剣!!」

 セイバーの涼やかな叫びと共に放たれた眩い光がバーサーカーと、そして剣の世界を貫き通した。

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内 容 ニックネーム/日時
えーと、始めましてですよね。こんにちは。
実はちょっと前からFate/Zeroアニメ化の流れで、こちらのブログの小説を読ませて頂いてました。
最終更新がほぼ一年前なので、もう続きは見れないのかなーっと思ってたところで続きのUPがきたので、ちょっと感激ですw
ギル様はもちろん(ここでは弓ねえと言うべき?w)、イリヤもエミヤも大好きなので、この戦いの決着が楽しみです。
もう全てが面白いのですが、私は今まで士郎に甘々だった弓ねえが、記憶戻ってツンツン我様になるまでは落ち着けません。なっても落ち着けません。
HAPPY ENDになるまでついていきます。続き頑張って下さい!
もぐさ
2012/03/01 11:39
同じくZeroをきっかけにすっかりFateおよび型月作品にどっぷりはまってしまった者です
その際各所で進められていたこちらの作品は本当好みで、しかし続きは少し諦めつつ「そろそろあったらいいなあ」くらいに思っていたのでこうして更新なさっているのを読むことができて本当によかったです
そして面白いですし続きが本当に気になる…!!
じっくり待たせていただきますので、完結まで楽しみにさせていただきます。
雑草
2012/03/04 16:13
テイルズからタイバニのご様子でしたので更新は半ば諦めていました。
ありがとう、そしてありがとうです。
完結をただ願って止みません。
きらら
2012/03/22 08:25
更新きてた、やったあああああああああ
2501
2012/04/08 05:47
久々の更新ですね
数年前からのファンです
いいところで終わっていたので大変気持ちよくよめました
いつまでもお待ちしています
333
2012/05/21 20:08

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