Shunkiのぼちぼち記

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zoom RSS Fate/gold knight 19

<<   作成日時 : 2009/09/13 03:05   >>

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 皆揃って帰宅した頃には、冬の早い日没のせいか周囲はすっかり薄暗くなっていた。手分けして、大急ぎで夕食の準備に掛かる。今夜から桜がいないということだったから、食器の数なんかは気をつけなくちゃいけないな。まあ、作る量についてはセイバーと藤ねえで1人分くらいは誤差の範囲に入るのだけど。
 そのセイバーは、早速タイヤキの消費にかかっていた。……魔力を融通してやれないのはマスターである俺が悪い。分かってる、分かってはいるんだが、その代替手段としてエンゲル係数をどどんと引き上げられるのは勘弁して欲しいよなあ。弓ねえの稼ぎだって有限なんだぞ。多分。推定。恐らく。
 なお、断定できないのにはそれなりに理由がある。我が家の家計が赤字に陥ったことが、この十年間一度としてないからだ。どんなに姉貴の稼ぎが悪くても、一ヶ月分の食費光熱費その他諸々必要経費は確実に出るんだよな。何だろうな、あの計算され尽くしたかのような収入は。
 まあ、それはともかく。
「しばらくタイヤキ食って待ってろ。すぐ作る」
「はむはむ……は、はひっ!」
 居間の方に声を掛けると、セイバーのもごもごした声が戻ってきた。あー、こりゃ慌てて口の中に頬張っていたタイヤキを一気に飲み込んだっぽいな。
「むう、既に半分は胃の中と見た」
 そんな解析能力はいらない。いや、これは解析じゃなくて得られた情報からの推測か。
 ……こりゃ一袋進呈じゃ足りなかったかも知れない。急いで作らないとえらいことになりそうだ。


  Fate/gold knight 19. せぴあいろのかこ


 制服の上着だけを脱ぎ、その上にエプロンを装着する。袖をまくってざっと手を洗うとこれで、ある意味戦闘準備完了だよな。毎日訪れるこの戦闘は、聖杯戦争よりもずっと大変で終わりのない戦いだ。いや、セイバーとは聖杯戦争が終わるまでかな? そう考えるとちょっと寂しいものがあるけれど、これは仕方のないことだよな。
 と、袖をまくりながら弓ねえがやってきた。俺とお揃いのエプロンは既に装着済みで、ふわっとした髪の毛はポニーテールにまとめてある。こりゃ珍しい、明日は雨か雪か槍か。いや、槍はあのランサーが降って来そうだから遠慮しておきます。そう言えばあいつ、どうしてるんだろう。元気かな。
「士郎、我も手伝おう」
「お? あー助かる、さんきゅ。何かあった?」
 姉貴が自ら手伝いに来る、というのは確実に何か裏があるということなので聞いてみる。と、それはもうげんなりとした顔になった。何だその顔、美人が台無しだぞ。
「いや、そろそろみかんの在庫が底をつきそうなのでな。セイバーめ、一気に半ダースは食す故」
「もうないのかよ!」
 思わず裏拳ツッコミを入れそうになって押し止める。反射的に投げ飛ばされたことが、姉貴の弟になってから何度もあったからなあ。一度などは庭までぶっ飛ばされて背中思い切り打って、うっかりあの世に行きそうになったっけな。衝撃で星が見えるって本当だったんだあ、と夜空を見上げながら思ったもんだ。
 それはさておいて……確かあのみかん箱は、藤ねえが藤村家から毎年恒例の差し入れとして三箱ほど担ぎ込んできた奴じゃなかったか。いつもなら最終的に数個はカビを生やしてしまうんだけど、今年はそれどころか足りないとな。恐るべし、英霊の食欲。恐らくはセイバー限定だけど。
「……明日でも買い出しに行くか……」
 がっくりと肩を落としながら、包丁を振るう。ははは、冬は鍋が最高だー。時間もすっかり押しちまったし、今日は手っ取り早くできる鶏つみれ鍋だ。
 虎を筆頭に、野菜もたっぷり食えよお前ら。サーヴァントも例外にあらず。きっと同じ台詞をアーチャーも言うはずだ。しかもあいつの場合、遠坂の取り皿に野菜をバランス良く積み上げるんだろうな。そんな光景が即座に脳裏に浮かぶ辺り、俺も来てるなあ。
「それが良い。しかし、よう肌が黄色うならぬものだの」
「姉貴だってならないだろ。サーヴァントだからじゃないか?」
「ふむ。そう考えると便利なものだ」
 フードプロセッサーで鶏肉をつみれにしながら、弓ねえは軽く首を捻る。
 ……ああ文明の利器よありがとう。この不器用な姉上がつみれなんていうものを作れるようになったのは、ひとえに文明の賜物だ。まあ魚で作るときは、内臓取って洗うのは俺の役割なんだけど。
「便利って……」
 俺は野菜を揃えながら出汁を調整。この手合いだと普段よりご飯の消費量が増える傾向にあるから、炊飯器に炊きあがってるご飯をおひつに移して第二弾をスタートさせる。いや、だって鶏の出汁だぞ。ご飯が進まない訳がないじゃないか。
 ……あーいかん、自分も腹が減ってるみたいだ。急いで進めないと。
「しかし、身長が伸びぬのは困りものだがの。我はいつの間に、そなたから見下ろされるようになったのやら」
 できたつみれを適度にスプーンですくいつつ、ぽいぽいと鍋に放り込んでいく弓ねえ。野菜は大皿に揃えて、取り皿を準備する俺。……いや、つみれ汁なんだから皿じゃなくて深めの鉢にレンゲか。
 ああ、何とスムーズに進むんだろう。何だか幸せを感じてしまった。いやちっこい幸せだな、俺。
 それはともかく、姉上の愚痴にお付き合いしないと後が大変だ。具体的には、我が家付属の道場でしばき倒される。姉貴はアーチャーのサーヴァントらしいけど、戦闘ではちゃんと剣なんかも振るってるように竹刀の扱いなんかもそれなりにできるからもう大変で。ま、弓だけ使えても実際の戦闘じゃ問題だしなあ。それ以前に、弓ねえが名前の通りに弓使ってるところなんて、俺見たことないぞ。
「服のサイズは変わらないから、いいんじゃないか? 俺なんてこの家に来てから成長期迎えたから、買い足し大変だったじゃないか」
「我は変わらぬのだが、売り場でのデフォルトのサイズが変わるのだ。下手をすると子供服売り場で事足りる」
「あー、食生活の変化で体格良くなってるっていうからなー。って、子供服?」
「最近は上限が160だったりするからのう。少々胸のサイズが合わぬこともあるが」
「わーお。でけぇ」
 なるほど。それはちょくちょく服を買いに行きたがる姉上には重要な問題だな。
 オーダーメイドで作ればいいじゃん、というのはこの際置いておく。この姉は俺という弟を持ったせいか、それなりに節度はあるのだ。そうほいほいオーダーで作るもんじゃねえ、としっかりきっぱり俺がしつけた。おかげでまあ、せいぜいデパートのお高い服を買う程度に留められているわけなんだがな。
 ……で、服のサイズ。要は弓ねえの身体のサイズ、と言ってもいいのか。
 サーヴァントというのは一度死んだ人物が英霊になった存在だから、いくら肉体を持っていてもその身体は成長しない、らしい。
 うちのアルバムをひっくり返してみると、その意味がよく分かる。五年前までは三人+たまに藤ねえで写ってる写真、それ以降は切嗣を除いた二人+時々藤ねえの写真をずらっと並べてみればもう、一目瞭然。
 俺はどんどん成長していって、身体つきも最初の頃とはずいぶん違ってる。途中で姿を消した切嗣は、まあ元々大人だったからさほど変化はない。藤ねえは、長かった髪を途中でばっさり切って、一応それなりに大人の顔に変化している。
 一人、弓ねえだけが最初と最後でまったく変化していない。髪の長さも、身長体重も。
「……士郎が年を取って死ぬまで、我はこの姿のままなのであろうな」
「あのなあ。そんな先のこと、考えないでくれよな。姉貴だって身体あるんだから、怪我や病気になることだってあるんだぞ」
 少し寂しそうな顔をした姉貴に、俺は慌ててそう言った。そうだ、弓ねえだって風邪を引くこともあるし、怪我なんてしょっちゅうしてるんだから。いくら年を取らなくても、そう言った要因で死ぬことはあるんだぞ。
 元が英霊かどうかには関係なく、今の弓ねえは普通に肉体を持った『衛宮弓美』という一人の人間で、俺の姉貴なんだから。
「う、うむ。それは気をつける。だが士郎、そなたも同じことであるぞ?」
「分かってるよ」
 そう、姉貴。
 だから、弓ねえは俺のことを心配してくれる。ちょっぴり上目遣いに俺の表情を伺う様は、その本性を知らなければ愛らしいお人形さんみたいで。うん、中身は超暴君なんだけどな。
「今はセイバーのおかげでかなり助かってるけど、いつまでも頼ってるわけにはいかないもんな」
「その通りだ。分かっていればよい」
 少しだけ緊張していた顔が、ふわっと微笑んだ。やっぱ、弓ねえはしゃべりさえしなければすごく可愛らしいんだよな。ふわふわの金髪で、白い肌で、赤くて綺麗な目をしていて。
「シロウ、まだでしょうか〜〜〜」
 ……同じく金髪に白い肌なのに、何でセイバーはこうなのかなあ。マスターとしてちょっと泣けてきた。そりゃ姉貴だって、口を開けばいろいろと問題はあるけどさ。それは遠坂にも言えることで。
「あー、悪い。そろそろテーブルの上片付けてくれ。あと遠坂たち呼んできてくれるか?」
「了解です!」
 でもまあ、ご飯をそれは美味しそうに食べてくれるのは、作る方としては作り甲斐があるってもんだよな。ちょっと一食の量が多いだけでさ。
 ……姉上。まだ貯金は大丈夫だから、溜息をついてこっちを見ないでくれ。藤村家から、ちゃんと藤ねえの食費巻き上げてくるからさ。

 桜がいないだけで、夕食の食卓はかなり殺伐とした雰囲気だった。鶏つみれ鍋はあっさりと食い尽くされ、白菜の最後の一切れまで消え去ってしまっている。いやもう、鍋やるときって戦争以上の戦場と化すよな。特に食欲魔神がいると、終了後の卓上がペンペン草の一本も生えない……じゃない、えのきの一本まで食い尽くされてさ。後片付けが簡単だから、この点は助かるけどな。
 藤ねえ対セイバーの猛獣対決はそれは見物だった。箸同士でぶつかり合うその様は、まさに真剣勝負。その間に別の鍋で俺たちがさっさと食事を済ませた後も、たっぷり鶏の出汁が出たスープの取り合いをしていたっけ。やれやれ。ま、これだけ綺麗に食べて貰えれば食材も作った側も満足だけどな。そう言えば前言を訂正しなくちゃならないな。『ちょっと』量が多いんじゃない、『とても』多いんだ、うん。
 それはともかく後片付けを終えて、俺はいつものように土蔵にいた。魔術の訓練を忘れないようにしないと、俺みたいなろくな能力のない奴はすぐに落ちぶれてしまう。遠坂やセイバーや弓ねえに、迷惑を掛けてしまう。
 そんなんじゃ、俺は戦場に立つ権利もなくなっちまうからな。
「投影、開始」
 かちりと、頭の中のトリガーを引く。投影の訓練に選んだのは、アーチャーが良く手にしている黒白の双剣。黒の干将、白の莫耶の夫婦剣だ。
 基本骨子を解明し、構成材質を解明し、その通りに組み立てていく。その過程で剣たちの過ごしてきた歴史を読み取り、上乗せしていく。
 やがて、俺の両手の中には黒と白の剣が生まれていた。外見はまあ、アーチャーの物と寸分違わぬ自信はあるんだけど。
「……まだ薄いなあ。これじゃ実戦には使えないや」
 双方をぶつけ合わせると、簡単に砕けて幻想に戻ってしまう。これでは、他のサーヴァントと刃を合わせてもほんの一瞬の気休めにしかならない。そんなの、まったく意味がない。やっぱり、いきなり宝具はちょっと無茶だったかなあ。
「いきなり宝具の類から試すからだろう、愚か者」
 ほら、アーチャーも俺の真正面で同じこと言ってるよ。って、またお前見に来てやがったな。暇人なのかお節介焼きなのかどっちだろうな。
「いや、まあ確かにお前の言うとおりだな。アーチャー」
「分かればいい」
 顔を上げながら答えたら、俺を見下ろしていたアーチャーは一瞬むっとして顔を逸らした。あーはいはいツンデレってやつね。女の子だと遠坂みたいにまあ可愛いんだけど、背の高い野郎はなあ。
「いつも使ってる包丁だと上手くいったんだよな。あんまり時間はないけどさ、この辺からだんだんランクアップさせていく方がいいのかな」
 会話をしながら、手の上に刺身包丁を投影する。余裕で成功、現実感も申し分なし。普段からちゃんと手入れしている奴の投影品だから、そこらにあったゴムホースを試し切りしても消えることもなく存在したままだ。
「まあ、その辺りが関の山だろう」
 くくっと喉の奥で笑いながら、アーチャーは俺の手から包丁をつまみ上げた。くるくる回して四方八方から出来具合を確認し、「まあまあだな」と呟きながらも返してくれる。うむ、アーチャーの目でまあまあなら、そこそこ出来はいいんだろうな。次は感心させてやるぞ、覚悟しろ。
「……衛宮士郎。弓美の剣でも上手くいかんのか?」
「弓ねえの?」
 と、ふとアーチャーが思い出したように切り出してきた。弓ねえの剣っていうと、あれか。いつもどこから出てくるか分からない、鞘のない銀色の剣。何度か見ているから、やれるかも知れないな。
「やってみる。投影開始」
 目を閉じて、弓ねえが剣を携えた姿を脳裏に浮かべてみた。ピントを剣に合わせ、構築を開始する。歴史を読み取り、積み上げ……ずし、と手の中に重みが出現した。
「投影終了……ありゃ」
 瞼を開けて見てみると、外見『だけ』はそっくりの剣がそこにあった。
 そう、外見だけ。その存在は希薄で、構成もちゃんとなってない。干将莫耶以上に出来ていない、どうしようもない代物だった。まあ、サーヴァントである姉貴がどこからともなく引っ張り出してきた剣、ってだけで普通の武器じゃないってのは分かってたけどさ。
「……お前の双剣の方が出来が良かったぞ、こりゃ」
「そのようだな。さすがに貴様には荷が重すぎたか」
 腕を組んで、くくっと喉を鳴らすアーチャー。ああ分かってるよ、俺の技量じゃこいつを投影するのにはまだまだ早いことが分かったんだろ。ちくしょう、見てろよ。
「分かってたんなら最初から言えよな。グラムじゃねえか、この剣」
 軽く振ると、その勢いだけで剣は消え去ってしまう。柄を握っていた手をぐっと拳の形にして、俺はアーチャーの顔を見上げた。ん、お前不思議そうな表情して何、人の顔見てんだよ。
「ふむ。そのくらいは分かるのだな」
「まあ、造るときにこいつの歴史は見せてもらうからなー。でも、弓ねえの剣じゃないよな」
 そう。俺は……多分アーチャーもだけど、物を複製する際にはその物が作られてからの歴史を組み込む過程が存在する。その時、持ち手だった人物が垣間見えることがあるんだけど……グラムの歴史には、どこにも弓ねえの姿が無かった。どうせなら姉貴の過去の一端でも見えればいいかなとは思っていたけれど、当てはすっかり外れてしまった。
「ああ。さすがにシグムンドやシグルドが女性ということはなかろうしな」
「だよなー」
 シグムンドとシグルドは、共にグラムを手にして戦った英雄の名前。そのどちらもが姉貴ではなくて、だからある意味俺はがっかりしたと同時にほっとしてもいた。
 英雄って奴は往々にして、悲劇的な最期を遂げるものだ。姉貴は今のところ、そうじゃないから。もちろん、弓ねえが過去を思い出してしまった時にその終わりが悲劇でないということを保証するものではないけれど。
「……あー。けどセイバーも弓ねえも、伝説の中じゃあ男の人だった可能性もあるのか」
 そこまで考えて、ふと気がついたことを俺は口にした。
 男装の麗人。
 可能性がないわけではない。歴史に名前が残っているのならばジャンヌ・ダルクがそうだが、あれは彼女が『彼女』だと判明していたから。周囲に女性であることがばれないまま、男の姿で戦場に立った女性もいるんじゃないだろうか。
 そして、それはセイバーや弓ねえのような。
「伝説とは往々にして変化していくものだからな。それに、古代であれば男の王を望んだ国もあろう」
「確かに」
 この俺の意見に関してはアーチャーも同感だったようで、うんうんと頷いてくれた。白い目で見られるかな、と思ったからこれは素直に喜ぼう。
「……もう一度見るか?」
「え?」
 唐突に落とされた言葉に、俺は改めて奴の顔を見つめた。前に鏡で見た、前髪を掻き上げた俺自身と良く似た顔をしている英霊は、俺を呆れた顔で見下ろして小さく溜息をつく。それから、短い言葉を追加して口にした。
「私の双剣だ。どうする?」
「あ、見たい」
 即答してしまう辺りが俺だなあ。いや、だって今自分にできる干将莫耶の投影はさっきのがせいぜいで、何だか違和感があるのにそれがどこだか分からないんだから。アーチャーがもう一度元を見せてくれるっていうのなら、こんなに喜ばしいことはない。オリジナル……とは違うんだけど、俺にとっては元となるこいつの剣を見せてもらえれば、この違和感を払拭することができるかもしれないからな。
「分かった。今回はサービスだぞ」
「さんきゅ」
 小さく頷くと同時に、奴の手の中に双剣が姿を現した。ありがたく至近距離でまじまじと拝ませてもらうと、脳の奥で何かがかちりとはまるような感覚がした。
 そうだ。この感覚が、今までにはなかったものだ。
「あー、そうかそうか。何か分かった」
「理解できたのなら何よりだ。言葉で説明は出来るか?」
 あ、アーチャーが笑った。ほんの少し唇の端を上げただけだけど、何か分かった。っていうか、俺もこんな感じで笑ってるんだろうか。
 ……ムッツリスケベとか言われることがあるのは、これが原因か、そうか。ヘンに納得した。
「無理だな。多分あんたもそうだと思うんだけど、言葉じゃなくって感覚というか図解というか、そういったので理解してるから」
 そう。他人はどうだか分からないけれど、俺は自分の脳内で繰り広げられている感覚や図解を、言葉にして示すのは無理だ。自分の中で理解できればいい、と考えていたからなのだろうが。もっとも言葉にしたところで、遠坂辺りは反則よーとか叫びそうだけどな。俺にしてみれば、あいつの五大属性コンプリートってのがよほど反則なんだが。
「やはりそうか」
 アーチャーも思考のやり方は似たようなものなのか、納得顔で頷く。この辺は同じ能力持ってるからなのか、何となく分かるなぁ。
「ああ、でもありがとうアーチャー。何か進める気がするよ」
「そうでなくては困る。貴様が足手まといになっては、凛やセイバーや弓美が苦労を背負うのだからな」
「うぐ」
 厳しいご指摘ありがとう。確かに、アーチャーの言うことにも一理あるんだから仕方がないよな。
 俺が足手まといになっちまうから、みんなに迷惑を掛けてしまってる。
 それを何とかしたいから俺は、こうやって自分の持つ能力を伸ばそうと修行に励んでいるんだから。
「ではな、衛宮士郎」
「ん」
 名を呼ばれ、反射的に返事した時にはもう、アーチャーの姿はなかった。また屋根の上で見張り番なんだろうなあ。
 屋根の上からの光景は、何度か見たことがある。結構良い眺めで、特に夜は遠くまで街の光が地面いっぱいに散らばっていて、子どもの頃はいつもわくわくして見てたっけ。姉貴と親父と三人で、寒いときはわざわざ毛布を持って上がって見てたことを思い出す。
 ……と、そこでやっと気がついたけど、サーヴァントも寒いんじゃないだろうか。少なくとも弓ねえは冬は寒がって夏は暑がってたし。それとも、受肉してるかしてないかで違うのかなあ。セイバーみたいな特例はともかく、睡眠は取らなくても良いみたいだけど。
「アーチャー、ここの毛布とか家の布団とか、使っていいんだぞー」
 思わず天井に向けて呼びかけてしまったけど、返事は戻ってこない。ま、そりゃそうだろうなあ。必要なら奴は勝手に使うさ。多分、客用布団とかしまってあるところも分かってるんだろうしな。
 にしても、姉貴や遠坂に迷惑を掛けないためとはいえアーチャー、俺に双剣を見せてくれたな。俺にとって結構使い勝手の良い武器ってことは、きっとあいつにとっても使いやすい武器のはずだ。何しろしょっちゅう使ってるからな。
 そんな大事な双剣を、俺なんかに見せてくれた。
「……本気でああいうの、ツンデレって言うんだろうな」
 普通は女の子に対して言う言葉なんだろうけれど、奴にはこの言葉がぴったりだ。素直じゃねーな、ったく。姉貴か遠坂かセイバーか、誰かのことが気になるんだろ。だから、三人に負担を掛けないよう俺に力をくれる。そう言うことにしておく、うん
「ま、確実に俺の前世じゃない。それだけは言える。というか言わせろ」
 屋根の向こう側にいるはずのあいつにそう吐き出したら、当たり前だと呆れた声が返ってきたような気がした。

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
ツンデレアーチャーキターーー!!これでかてる!

アーチャーが士郎殺そうとはしない感じになるのかな?
ウドんゲッター
2009/09/13 10:02
>ウドんゲッターさま
とりあえず本編よりは仲は悪くないですねえ。殺すよりはしばくくらいかも。
Shunki
2009/09/14 22:16
今回は新旧弓兵話でしたか、それにしてもツンデレエミヤはどちらかと言えばデレツンぐらいの割合に見えました。
自分からフラグ立てする新旧弓や食にかまけて一歩出遅れた感の有る剣の人とかにwktkしつつ次回も期待しております。 季節の変わり目、御自愛下さいまし。
lostlifer
2009/09/15 01:16
 ディ・モールト久々のF/gk更新に狂喜してます。弓ねえ可愛いよ弓ねえ!
 でも、今回のヒロインがどう読んでもツンデレな漢ってのはどうした事ですかねwwwww
神奈川の姉魂
2009/09/15 20:23
>lostliferさま
デレ多めですかねえ? 一応ツンデレのつもりだったんですが。
お身体は皆様お大事に。

>神奈川の姉魂さま
弓ねえ可愛いですか! ありがとうございますー。
あのやろーはヒロインなのか。元がヒロイン属性なのか。そうか。
Shunki
2009/09/18 23:47

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